中林秀之事務所

組織経営に“センスメイキング”をどのように育んでいますか?

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組織経営に“センスメイキング”をどのように育んでいますか?

組織経営に“センスメイキング”をどのように育んでいますか?

2019/03/20

 最近、ビジネス界や経営面でもよく聞くキーワードに“センスメイキング”があります。もともとは、組織心理学者のカール・ワイクらが中心となって伝えられてきた考え方のようですが、基本は文字通りSense(意味) Making(作る)ということで、単に意味の解釈だけでなく、Making=作るということに重点が置かれている概念です。特に最近では、デンマークの経営コンサルタントであるクリスチャン・マスビアウ氏の「センスメイキング」という本が翻訳出版されたことで、ひと際注目を浴びているように思います。
 “センスメイキング”が改めて今注目されている理由の一つに、その本にも書かれているとおり、現在のビジネスや教育等の世界中の趨勢がAIやIoTなどのIT技術あるいはSTEM(科学・技術・工学・数学)への偏重のきらいがある中で、その一方多くの人々に“データ&アルゴリズム至上主義”への危機感があるということが挙げられます。“センスメイキング”とは、実際の生身の人間が具体的に行動・活動することを通じて、そこから得られた感覚に対して意味・意義を形作っていくことですので、先の趨勢とは逆に、ある意味でデジタルに対するアナログ的な意味も持っているものかと思います。
 もちろん、弊所はこのデジタル・トランスフォメ―ションの時代に抗うつもりも否定するつもりもありません。むしろ、この指数関数的な技術変化の時代において、それらを有効に活用するためにも、“センスメイキング”が重要なのではないかと思っています。ただ多くの企業にとって、それ以上に重要なのは、“センスメイキング”が企業固有の競争力の源泉になりうるという点ではないでしょうか。
 マスビアウ氏の書籍の中で、“センスメイキング”を古代哲学者アリストテレスの“実践知”で説明している部分があります。それは実践の現場における活動によって得られる知であり、その場で適切な判断や能力を発揮できる知性のことです。同様に、このアリストテレスの実践知を表す“フロネシス”(賢慮)という言葉で企業組織理論を体系化されているのが、国際的な組織経営の権威である一橋大学の野中郁次郎教授です。野中教授は、日本発のナレッジマネジメントの提唱者でもあります。それは、経験が生む暗黙知=言葉や形にしづらい知を組織で摺合わせ(共同化)ながら、暗黙知を形式知として明確化させ(表出化)、形式知と形式知を繋ぎ体系化させる(連結化)を経て、それらをまた新たに個人の内面に暗黙知として紡いでいく(内面化)といったプロセスを言います。近年では、それらを可能とする現代的なリーダーシップの象徴としても、フロネシス(賢慮)というコンセプトを使っているようです。
 これらのモデルを考えると、例えばトヨタの「現地・現物」などの事例を思い浮かべる方も多いかもしれません。現場における実践と、そこから得た知の活用は、実は日本の企業が伝統的に得手としていることなのです。ただ人数規模が大きくない多くの企業では、理論は理解できても、それを文字通り実践していくのは、仕組みづくりに必要なリソース面も含めてハードルが高いようです。
 弊所では、そのような中小企業を主な対象にして“競争力の源泉”を明確化するプロセスに、このセンスメイキングの考え方が大きなヒントになると考えています。それぞれの組織固有の成り立ち、歴史背景、ストーリーなど、さまざまな観点から、よりシンプルに共同の学びの場を得ながら、長く存続できる経営基盤の再構築に役立つのではないでしょうか。
 多くの企業では、どうしても緊急の対応、短期的な利益追求への活動のみに時間が割かれがちで、本来の自社だけの価値を明確化していくような組織活動に時間を割り当てるのが困難な現実があります。社内で考えるだけでなく、社外支援者を含めて、それぞれの社員が“働く意味”を見いだしながら、組織全体の“会社の存在意義”に気づくプロセスを作られることをお勧めします。

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