“変わらないために変わる”を経営に展開できますか?
2019/04/02
“企業経営を長く続けていれば、必ずいい時も悪い時もある”これはベテラン経営者のほとんどの方々が身に染みて納得する感覚ではないでしょうか。3年で70%近く、10年で90%以上の会社がなくなるともいわれますし、様々なデータがあって正確にはわかりませんが、とにかく数十年以上経営し続ける企業は稀有であり、さらに変化が激しくなると予想される今後は、経営のさらなる短期化が憂慮されています。
それでも日本は、他国に比べて長期的に経営できている企業の割合が多いといわれており、実際に大手の有名な企業で、いわゆる100年企業もしくはそれに近い企業も数多くあり、世界の有識者からも度々注目を浴びているようです。
また、現在はまだそれほど一般的に知られていなくても、数十年以上経営を続けている企業も多く存在します。弊所もそのような企業の支援を行ってきました。長期に渡り経営を維持している会社は、業界や商材が異なってもある一定の共通点はあるようです。
端的な言い方をすれば、創業当初からの根本的な考え方を振り返りながら、同時に変革していく感覚が常に同居しているような共通点です。長い間に、外部環境が変化していきますが、それによって、創業当初の根本的な考え方が失われがちです。自分たちを見失いがちな激変期にこそ、自分たちの基本的な考え方や目指すあり方などを振り返る企業は、やはり強い精神的基盤を有しているといっていいかもしれません。ただし、一方ではまりがちな罠があります。それは、その自分たちの考えに固執しすぎてしまうということです。あえて言うと“制限された信念”にとらわれてしまうというリスクです。自分たちのあり様を決め込みすぎてしまうと、今度は、周りの変化に対して頑なになり、柔軟さが失われて硬直した経営になり、結果的に生き残りが困難になります。激動する外部環境に対して、振り回されすぎずに自分たちの足元を見直すことは大変重要ですが、同時に時代の変遷・顧客ニーズの変化などに合わせて自らも変化していく。さらには自分たちの変化の在り方を常に模索していく、という感覚がとても大切になると考えます。
以前より何人かの識者、アーティスト、ミュージシャンなどが「変わらないために変わる」という言葉を残してきましたが、弊社はまさにビジネスや経営の面においても、この言葉に同感します。「変わらない」のは、その組織が有する独自の成り立ちや、それを支えてきた文化の根に当たる部分かもしれません。それを変えないことが肝要ですが、同時に、周辺変化に動的に対応をしながら、いわば枝葉にあたる部分は、変化させていくことも考慮していく必要が出てきます。変化させるべきところを変化させなければ最重要な部分が失われて存続不能になり得るからです。
そのような点から、定期的に次のような問いを向けて振り返ることをお勧めしています。“何を残して、何を変えていくのか”またそれは“どのような観点から、その選択を決断するのか”。ただし、その二つ「変えない」と「変える」を同時に組織全体で対応するのは、現実的にはそれほど簡単ではないかもしれません。実際には、一定の周期のようなものがあり、変化に対して敏感になるサイクルと、自らのルーツを掘り下げていくサイクルがあり、その周期を常に感じ取りながら社員・組織の意識を都度刺激、浸透させていくことがトップ・リーダーの役割ともいえるのではないでしょうか。弊所では、そのようなリーダーと会社こそ、長期にわたり社会的にも重要な組織となり得ると感じ、全面的に支援したいと考えています。