自分を知ること、制御すること―経営におけるメタ認知の重要性。
2021/06/10
最近よく「メタ認知」という言葉を聴くようになった、という方も多いのではないでしょうか。かなり以前から、例えばストレングスファインダーというメソッドで、自分の強みや弱みを知る、ということが紹介されていました。仕事を探すにしても、自分の好き嫌いや、得意・苦手を知っておくことは大切ですね。これらは、いわゆる自己認識力という概念で、基本的なビジネススキルの一つとなっているものです。それに対して、「メタ認知」は、それをさらに深め、向上させたもの、と言っても良いかもしれません。元々は認知心理学の分野で長く研究されてきたものですが、近年急速に注目され始め、教育・学習の分野などでも取り上げられており、また経営・ビジネスの面でも着目されています。要約するならば、メタ(meta)は、より高度な、超越した、という意味を持つので、自己認識していること自体を俯瞰して認知している、というようなことになります。単なる自己認識と異なるのは、自分の身体や心理の状態、行動や言動に対してモニタリングをして、課題を把握して、制御や改善ができる、という能力といえます。
経営者や幹部は、特に日々経営責任やプレッシャーに晒され、とても神経をとがらせやすくなります。ともすると感情を抑えられなくなることもしばしばかもしれません。しかし、上層部の言動や行動が、いかに組織内外に影響を与えるか、について文字通り認知できているかどうか、という問題が起こりやすいです。特に社内の人間は、上司・幹部・トップリーダーの振る舞いや表情に、想像以上に敏感なものなのです。そのような時が重なり、組織内の相互信頼が失われていく、ということになると、それこそ危機に陥ります。ただ、表面上は、社内の人々はあまり表現しませんし、できません。つまり、経営者や幹部が他者の感情変化を認識できない、ということが起きやすくなります。認知力の前提として、自己認知ができなければ、他者の本当の状況を認知できない、という点があります。
もちろん、普段の暮らしで、あまり自己認識とかメタ認知と神経質になりすぎる必要はないでしょう。良い意味での鈍感力も時に必要かもしれません。しかし一方で、現在の不自由な暮らしや仕事を強いられてきた新型コロナ禍で、メンタルヘルスの重要性が再認識され、ポストコロナ時代は、そのような精神面や感情面が、ビジネスや教育においても、さらに重要になってくると考えられます。そのような点からも経営やビジネス、組織づくりという点において、このメタ認知力の重要性が、さらに今後増していくと思います。
とはいえ、既述したように、自分自身の感情や状態に対するモニタリングやコントロール、そして改善を行うというのは、口で言うほどやさしくはないと思われます。エグゼクティブ・コーチは、いわばメタ認知力を上げていくための力強い支援者である、と考えています。また、そのようなコーチや専門家は、一人でも可能なセルフコーチングや心理状態の維持法などを伝えられます。そのような支援者を上手くいかしながら、経営、組織の健全性を保っていくことをお勧めします。